紫雲のブログ 第2回

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トシフミの呪い


こんにちは、紫運です。
今日は、私が今でも静かに蝕まれている、とある“呪い”のお話をしましょう。

この呪い、実はもうこの世にはいない、私の父――「トシフミ」が残していったものなんです。


若かりし頃の話です。
私はフレッシュ社会人になったばかりで、生活にも余裕はなく、
それなりにギリギリな日々を送っていました。

そんな私を気にかけてくれていたのか、
田舎から出張で上京してくるたびに、父は私をささやかな夕食に誘ってくれていたんです。

「今日はおいしいお肉でも食べに行くか」
そう言って、ちょっと洒落たレストランに連れて行ってくれました。

そして、コースを頼むことに。

それなのに――

メニューを最初のページから最後のページまで、
まるで文学作品でも読むように、じっくり……ねっとりと読み込む父。

「え、肉じゃなかったっけ……?」と思っていると、
父はソムリエのような落ち着いた手つきで白ワインをチョイス。
さらに、メイン料理には魚料理を選んだのです。

私は少し驚きました。

あれ?お肉じゃないの……?
それに白ワインの選び方、なんかすごくプロっぽい……
もしかして、父って“そういう人”だったのか?

ちょっと感心しながら食事を終え、帰りの電車の中で、私はつい聞いてしまいました。

「お父さん、さっきメニューをあんなにじっくり見てたの、何か理由があったの?」

すると父は、ごく自然に、こう答えたのです。


「コースの中で、単品で頼んだら一番高いメニューを探してた」


……………え。

私の中で、何かがカラカラと崩れ落ちました(笑)

肉が食べたかったからじゃない。
魚が好きだったわけでもない。
白ワインとのマリアージュでもない。

父は、
「一番高いものを選ぶこと=家族への最大の愛情」
……そんな考えを持っていたのです。


あれから幾星霜。
そして気づくと、私にもその呪いが、しっかりと発動しているのです。

レストランでコース料理を選ぶとき、
私は必ず――メイン料理の全品の“単品価格”を調べてしまう。

食べたいものじゃなくていい。
高ければ、高い方を選ぶ。それが、もう“体に染みついて”しまっているんです。


本当は、鶏の赤ワイン煮が食べたかったのに……
ヒラメの香草バター焼きが500円高かったら、そっちにしちゃうんです。


そう、それが私の中に今も生きている、
“トシフミの呪い”なんです。


🍽️今日の格言

選べるなら、お得を取れ。
でも、たまには“食べたいもの”を選んでもいいんじゃない?


🧂あとがき(紫運より)

愛情深く、実直で、ちょっとだけ頑固な父。
今にして思えば、それもまたひとつのやさしさの形だったのかもしれません。

でもね、今度こそ言わせてほしい。

「お父さん……やっぱり私は、ステーキが食べたかったよ。」

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