逆位置のコラム 第12回

タロットの書庫

吊るされても、まだ察しない男

R: THE HANGED MAN(吊るされた男・逆位置)


■ はじめに

前回、《正義・逆位置》のコラムでお話ししたように、
自分が作った“正しさ”が、自分を縛ってしまうことがあります。

そしてその“正しさ”を貫こうとすればするほど、
その場に留まり続けなければならなくなる。

それがまるで、自分で立てた柱に、自分で吊るされるような感覚です。

《吊るされた男・逆位置》は、そんな状態を象徴するカードです。


■ 絵柄から読み取る「逆位置の吊るされた男」

このカード、本来は「視点を変える」「止まることで見える真実」を意味しています。
だから正位置では、吊るされた男は穏やかな表情で悟りを得たような雰囲気なんです。

でもこの逆位置の男は――

  • 苦しそうな顔で
  • 無理に手をつこうとしてバランスを崩し
  • 足が空中でジタバタしている

まるで、吊るされた状態の意味を活かせていないように見えるのです。

本来なら逆さの世界を見ることで、
これまでとは違う視点を得られるはずなのに――
それを拒んでいるようにも見えます。


■ 紫運の読み:動こうとするほど、見失っていく

私自身も、まさにこのカードのような時期を経験したことがあります。

前回の《正義》で書いたように、
「これは公正だ」と思って決めたルールが、
だんだん自分の首を締めていって――
気づけば、自分の言葉に、自分が吊るされていた

そのとき、「いや、このままじゃダメだ」と思って、
なんとか打開策を見つけようと必死に動き始めたんです。
でも、考えても考えても突破口が見えない。

そしてふと、こう気づいた瞬間がありました。

「……何やってるんだろう。
吊るされてるのに、
結局また、前と同じ視点で“どうにか抜けよう”としてる……」

視点を変えるチャンスがあるのに、
私は、同じ物の見方で、
どうにか突破口だけ作ろうとしてた。

結局、やり方を変えるんじゃなくて、
これまでのやり方をさらにこじらせて、
自分をますます苦しくしていたんです。


■ 止まって見えることは、進むことになる

《吊るされた男・逆位置》は、

  • 「止まらなければならないのに止まれない」
  • 「止まっているのに見えていない」
  • 「本当は変われるのに、今の視点にしがみついている」

そんな状態をやさしく、でもはっきりと指摘してくるカードです。

でも裏を返せば、視点を変えれば抜け出せるということ。
吊るされているのは、責めではなくきっかけなのです。


■ キーワード比較

正位置:

  • 視点の転換
  • 自己犠牲
  • 待つことの意味
  • 霊的な気づき
  • 静的な成熟

逆位置:

  • 動けないことへの抵抗
  • 無理に進もうとする焦り
  • 視点が変わっていない
  • 犠牲感だけが残る
  • 停滞と苦しみの自覚

■ シーン別リーディング

恋愛

  • 相手の気持ちが見えないまま、ひとりでがんばりすぎていませんか?
  • 止まっている状況に焦って行動すると、逆効果になることも
    → 一度「関係を逆から見る」視点を。たとえば、自分が相手だったらどう見えているか

仕事

  • がんばってるのに成果が出ないとき
  • 「まだ足りない」と思って努力を続けるけれど、もう違うアプローチが必要かも
    → 手を止めることに罪悪感を持たず、「今見えているもの」の中に答えを探してみて

人間関係

  • 遠慮や自己犠牲で疲れていませんか?
  • あなたが一歩引くことでバランスを取っていた関係、もう限界かもしれません
    → あえて“前に出る”ことで新しい展開が生まれる可能性もあります

■ 今日のまとめ

《吊るされた男・逆位置》は、
「変化のチャンスに気づかないまま、苦しい現状だけを見つめてしまっている」状態です。

でも、逆さまの世界からしか見えないものは、たしかにある。
そしてそれは、無理に抜け出すより、見方を変えた方が早く次に進めるということかもしれません。

吊るされているあなたを、責める必要はありません。
でも、どうか一度だけ、真下を見てみてください。
あなたが求めていたものは、そこに落ちているかもしれません。


■ 次回予告

次回は第13回、《死神(DEATH)》の逆位置です。
終わらせたら次に進めるのに、終われず、抜けきれない。
「生殺し」のような変化待ちの時間について、深く掘り下げていきます。


📝 書き手:晴風 紫運(しうん)
Instagram → https://www.instagram.com/harukazeshiun

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