吊るされても、まだ察しない男
R: THE HANGED MAN(吊るされた男・逆位置)
■ はじめに
前回、《正義・逆位置》のコラムでお話ししたように、
自分が作った“正しさ”が、自分を縛ってしまうことがあります。
そしてその“正しさ”を貫こうとすればするほど、
その場に留まり続けなければならなくなる。
それがまるで、自分で立てた柱に、自分で吊るされるような感覚です。
《吊るされた男・逆位置》は、そんな状態を象徴するカードです。
■ 絵柄から読み取る「逆位置の吊るされた男」
このカード、本来は「視点を変える」「止まることで見える真実」を意味しています。
だから正位置では、吊るされた男は穏やかな表情で悟りを得たような雰囲気なんです。
でもこの逆位置の男は――
- 苦しそうな顔で
- 無理に手をつこうとしてバランスを崩し
- 足が空中でジタバタしている
まるで、吊るされた状態の意味を活かせていないように見えるのです。
本来なら逆さの世界を見ることで、
これまでとは違う視点を得られるはずなのに――
それを拒んでいるようにも見えます。
■ 紫運の読み:動こうとするほど、見失っていく
私自身も、まさにこのカードのような時期を経験したことがあります。
前回の《正義》で書いたように、
「これは公正だ」と思って決めたルールが、
だんだん自分の首を締めていって――
気づけば、自分の言葉に、自分が吊るされていた。
そのとき、「いや、このままじゃダメだ」と思って、
なんとか打開策を見つけようと必死に動き始めたんです。
でも、考えても考えても突破口が見えない。
そしてふと、こう気づいた瞬間がありました。
「……何やってるんだろう。
吊るされてるのに、
結局また、前と同じ視点で“どうにか抜けよう”としてる……」視点を変えるチャンスがあるのに、
私は、同じ物の見方で、
どうにか突破口だけ作ろうとしてた。
結局、やり方を変えるんじゃなくて、
これまでのやり方をさらにこじらせて、
自分をますます苦しくしていたんです。
■ 止まって見えることは、進むことになる
《吊るされた男・逆位置》は、
- 「止まらなければならないのに止まれない」
- 「止まっているのに見えていない」
- 「本当は変われるのに、今の視点にしがみついている」
そんな状態をやさしく、でもはっきりと指摘してくるカードです。
でも裏を返せば、視点を変えれば抜け出せるということ。
吊るされているのは、責めではなくきっかけなのです。
■ キーワード比較
正位置:
- 視点の転換
- 自己犠牲
- 待つことの意味
- 霊的な気づき
- 静的な成熟
逆位置:
- 動けないことへの抵抗
- 無理に進もうとする焦り
- 視点が変わっていない
- 犠牲感だけが残る
- 停滞と苦しみの自覚
■ シーン別リーディング
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■ 今日のまとめ
《吊るされた男・逆位置》は、
「変化のチャンスに気づかないまま、苦しい現状だけを見つめてしまっている」状態です。
でも、逆さまの世界からしか見えないものは、たしかにある。
そしてそれは、無理に抜け出すより、見方を変えた方が早く次に進めるということかもしれません。
吊るされているあなたを、責める必要はありません。
でも、どうか一度だけ、真下を見てみてください。
あなたが求めていたものは、そこに落ちているかもしれません。
■ 次回予告
次回は第13回、《死神(DEATH)》の逆位置です。
終わらせたら次に進めるのに、終われず、抜けきれない。
「生殺し」のような変化待ちの時間について、深く掘り下げていきます。
📝 書き手:晴風 紫運(しうん)
Instagram → https://www.instagram.com/harukazeshiun