恋人たちよ、なぜ踊らぬ。私、ラバーズですよ?
— R: THE LOVERS(逆位置 恋人)—
「選ぶ」って、本当は勇気のいることだと思うんです。
でも、もっと苦しいのは── 選ばれなかったと気づいた側かもしれません。
THE LOVERS(恋人)の逆位置。
このカードを見たとき、胸の奥がざわりとしました。
■ 視覚で読む、逆位置LOVERSの要素
恋人のカードは本来、愛・選択・絆・調和の象徴。
でもこの逆位置の絵に現れたのは──
背を向けられたまま、手を伸ばしている人の姿。
天使は雲の中から沈んだ顔で見下ろしていて、
足元には雷。空気は重く、言葉が置き去りになっている。
相手は振り向かない。
でも、手を伸ばしている側は、それでも何かを伝えようとしている。
その姿が、痛いほどリアルでした。
このカードを描いたとき、私が意識していたのはこんな構図
- 向き合えなかったまま、離れていく関係
- 気づけば“選ばれていなかった”側の沈黙
- 伝えたかったことがあるのに、言葉が届かない距離
- 「選んだ」のではなく、「選ばれなかった」結果として残された誰か
- 雨と雷が、心の中とリンクしているような空気
■ 紫運の視点①:語られなかった別れのかたち
これは私自身の話じゃないんですが、
よく恋愛相談でこんなケースに出会います。
「連絡の頻度が減ってきたんですよね……」
「予定を合わせようとすると、いつも忙しいって言われて」
「こっちから誘うのをやめたら、何も起きなくなりました」
──で、聞いていると、本人もどこかでわかってるんです。
“もう選ばれていない”って。
でも、人ってそれをはっきり認めるのが怖くて、
どこかで「まだ可能性があるのかも」って思い続けてしまう。
このカードに描かれた、
手を伸ばしながらも、目を合わせてもらえない姿。
誰も怒っていないし、責めてもいない。
だけど、明らかに“決まってしまった”空気が漂っていて。
私はこの絵を見て、
「別れって、声に出さなくても成立するんだな」って、改めて思いました。
■ 紫運の視点②:見守る地上と、見下ろす天のあいだで
少し前に、知り合い同士をくっつけようと
さりげない飲み会をセッティングしたことがあるんです。
年齢も相性も悪くない。
お互いに恋人募集中。
会話も、それなりには弾んでいた。
でも……なぜか、目が合わない。
ひとりが話しかけると、もうひとりはグラスを見てる。
ようやく笑ったかと思えば、もう片方は席を立ってる。
私は隣で、心の中で笛を吹き、太鼓を鳴らし、
「今よ! ここで運命感じて~!」と盛り上げてたんですが……
まったく踊らない。無風。無反応。完全にすれ違い。
そしてふと、思いました。
あの場で私が感じていたのは、
「地上の視点」──つまり、当人たちを応援する立場。
でも、この恋人の逆位置に描かれているのは、
「天使の視点」──すでに決まった結末を見ている存在。
天はもう知っている。
ふたりは“もう選び合っていない”ってことを。
なのに地上ではまだ、誰かが期待し、手を伸ばし続けている。
そのズレの中で起こるのが、このカードの“痛み”なのかもしれません。
■ このカードの象徴・キーワード
- 【正位置】愛・選択・調和・引き合う力・相互理解
- 【逆位置】すれ違い・片想い・選ばれなさ・沈黙の別れ・意志のすれ違い・距離の固定化
■ シーン別リーディング
💘 恋愛
選ぶのは自由。
でも、選ばれなかったときにどう立ち直るかは、もっと自由であっていい。
💼 仕事
共に進んでいたと思っていたチームメンバーが、
実は別の方向を見ていた──そんな事実が浮かびやすい時期。
🤝 人間関係
「言わなくてもわかると思ってた」が通じなかったとき、
沈黙のまま離れていく関係もある。
その静けさに耐える覚悟を持てるかが鍵。
■ 今日のまとめ
- 恋人の逆位置は、「すれ違いの中で生まれる沈黙の別れ」
- 愛とは選び合うこと。そして、選ばれなかった時の痛みもまた本物
- “期待する側”と“決まってしまった側”の視点がズレたとき、
人はもっとも傷つくのかもしれない
📌 次回予告
次に登場するのは──
本来は“勝利”や“突き進む意志”の象徴である“戦車”のカードが、
逆位置になったとたん、「動けない」「噛み合わない」物語に変わった一枚。
頑張ってるのに進まない。
力をかければかけるほど、ズレていく。
そんな時、あなたなら、どうやって止まりますか?
第七回は、“暴走しない勇気”についてお届けします。
🧙♀️ 紫雲 – Shiun
タロットと紫微斗数を中心に活動する占い師。
「カードの絵柄は、心の鏡」をモットーに、ゆるやかに読み解いています。
📷 Instagram:@HarukazeShiun