逆位置のコラム 第7回

占術

止まることでしか、前に進めないときがある

— R: THE CHARIOT(逆位置 戦車)—

何かを取り戻したくて。
何者かであろうとして。
もう一度、走り出そうとした。

──でも、止まり方を忘れていた。

THE CHARIOT(戦車)の逆位置。

このカードを見た瞬間、私は心の中でブレーキを踏んだ。


■ 視覚で読む、逆位置CHARIOTの要素

戦車は本来、勝利・突破・意志の象徴
進むべき方向が定まっていて、自信と統率力で道を切り拓いていく存在です。

でも、この逆位置の戦車には、そのはずの“意志”が見えない。

手綱はぐらつき、
左右のスフィンクスはバラバラの方向を向いている。
顔には焦り、背景には雷、前輪は浮きかけてる。

──進んでいるように見えるけど、たぶん、進んでない。

……ちなみに、このカードの“スフィンクス”たちは、
正直ちょっとスフィンクスっぽくない。
もはや“感情ぐちゃぐちゃの大型犬2匹”という印象すらあります(笑)

黒と白がバラバラの方向を向いていて、手綱もたるんでる。
主人公の顔にも、勝者らしさは見当たらない。

このあたりが、「戦車」の逆位置として、
“暴走”というより“混乱”の色合いを強めているのかもしれません。

このカードを描いたとき、意識したのはこんな状態:

  • 強く見せたいけど、心が追いついていない人
  • 勝つために走ってるけど、何に勝つのか忘れてる人
  • 止まると負ける気がして、ブレーキが踏めない人
  • 誰にも止められないまま、自分すら制御不能になってる人

■ 紫運の視点:人生という戦場に、いま誰が乗ってる?

こういう人、何人か見たことがあります。

──いや、
かつての自分も、そのうちのひとりだったのかもしれない。

何かをやり直そうとして、
信頼を取り戻そうとして、
尊敬されたくて、見返したくて──

いろんな「再スタート」があるけれど、
その動機が“前に進む”ことだけに偏ったとき、
人は一番危ないスピードで走り出す。

そして加速しすぎた戦車は、ブレーキの位置を見失う。

「いま走るべきか」ではなく、
「止まるなんて許されない」と思ってしまうんですよね。

……あの頃の私も、そんな走り方をしていた。
何を見ていたか、なぜ焦っていたかすら、今となってははっきり思い出せないけれど、
とにかく止まるのが怖かった。

でも、止まらなければ見えなかった景色が、確かにある。
戦車を降りたあとにしかわからない、自分の姿もある。

だから今、このカードの空を見上げると、
そこには「嵐」ではなく、「警告」があるように思うのです。


■ このカードの象徴・キーワード

【正位置】勝利・突破・行動力・自信・前進・決断
【逆位置】制御不能・焦り・空回り・脱線・目的喪失・暴走する再起


■ シーン別リーディング

💘 恋愛
一途に突っ走っていないか?
相手が止まっているのに、こちらだけが加速しているとき、
関係はすれ違いではなく“衝突”に変わる。

💼 仕事
「結果を出さなきゃ」と思うほどに、
確認や相談を飛ばしていないか?
目的を見失った成果主義は、現場を壊します。

🤝 人間関係
頑張ってるのに空回りしてる感覚があるなら、
一度、深呼吸して“手綱を握り直す”必要があるかもしれません。


■ 今日のまとめ

  • 逆位置の戦車は、「止まることを許さない空気」への警告
  • 勝ちたい気持ちが強すぎると、制御不能に陥る
  • 自分をコントロールできる人が、ほんとうに前へ進める人

📌 次回予告

次に登場するのは──

本来は“優しさで猛獣を制す”象徴である「力」のカードが、
逆位置になったとたん、「制御できない力」「無理やり黙らせようとする意志」へと変わってしまった一枚。

押さえつけたつもりが、怒りを育てていた。

そして、気づいた時にはもう、その口は開いていた。

第八回は、“優しさを履き違えた力”の話を、お届けします。


🧙‍♀️ 紫雲 – Shiun
タロットと紫微斗数を中心に活動する占い師。
「カードの絵柄は、心の鏡」をモットーに、ゆるやかに読み解いています。

📷 Instagram:@HarukazeShiun

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