逆位置のコラム 第8回

占術

優しさがインストールされていない人

“支える力”を“封じる力”と履き違えた、その結果

— R: STRENGTH(逆位置 力)—


「やさしさ」は、人を守るためにある。

でも、時にそれは、  
「黙らせる」ための言葉にもなる。

THE STRENGTH(力)の逆位置。

このカードを見たとき、私はこう感じました。

──この人、優しさがインストールされていないのかもしれない

■ 視覚で読む、逆位置STRENGTHの要素

STRENGTHは本来、やさしさと信念で獣をなだめるカード。
力を見せつけるのではなく、力を「信じてもらえる人」が持つ構図です。

でも、逆位置になると、それが崩れる。

このカードでは、
白衣の女性がライオンの口をこじ開けようとしている。
表情は強ばり、手には力が入りすぎていて、
そして獅子は──怒っている。

手綱はない。対話もない。
あるのは「黙らせたい側」と「黙りたくない側」の衝突だけ。


このカードを描いたとき、意識していたのはこんな状態:

  • “守るため”と言いながら、相手の声を奪っている
  • 表情は笑っているのに、力が込められている
  • 本音を出されると都合が悪いから、先に封じる
  • 力を“振るう”のではなく、“預かった”ことを忘れている人

■ 紫運の視点:支えるつもりで、封じてしまった人たちへ

最近、とあるニュースを見ました。

組織のトップが、部下から告発された。
内部の問題、贈与、ハラスメント──
さまざまなことが書かれていたという。

でも、その人の第一声はこうだった。

「うそ八百だ」

そして、告発した相手を特定し、
処分した。


私、それを見たときに思いました。

「ああ、この人、今まさに“ライオンの口を無理やりこじ開けてる”んだな」って。

告発というのは、
その人にとっての“咆哮”だったかもしれない。
勇気を振り絞って開けた口だったかもしれない。

でも、それを真正面から受け止めるのではなく、
「声を上げさせたこと」自体を罪にした。

しかも「信頼を裏切った」「組織を傷つけた」。
……そうやって、“正しさ”の仮面で圧をかける。


このとき、私の頭の中では
「この人、優しさがインストールされていないのかも」って思っていました。

処分は“公平”かもしれない。
本人の中では“正義”だったのかもしれない。

でもその力は、
“支えるための力”ではなく、“封じるための力”に見えたんです。


■ このカードの象徴・キーワード

  • 【正位置】やさしさ・内なる強さ・信念・共感・忍耐・対話
  • 【逆位置】支配的なやさしさ・押しつけ・抑圧・過干渉・沈黙させる力・“正しさ”の暴力化

■ シーン別リーディング

💘 恋愛

相手の気持ちに「寄り添ってるつもり」で、
実は「押しつけて」いないか?
やさしさが苦しさに変わる瞬間を見逃さないで。

💼 仕事

部下や後輩に対して、「指導」と「封じ」がすり替わっていないか。
言葉のトーンが、結果的に“萎縮”を生んでいないかを確認しよう。

🤝 人間関係

「私があなたのためにやってるんだから」──
この言葉が出たとき、一度立ち止まって。
その行動、本当に相手が求めてる?


■ 今日のまとめ

  • 逆位置の力は、「やさしさの名を借りたコントロール」を映し出す
  • 力とは“振るう”ものではなく、“受け止める”ためにある
  • 優しさが欠けた強さは、ただの支配になってしまう

📌 次回予告

次に登場するのは──

本来は“公正”と“誠実な判断”を象徴する「正義」のカードが、
逆位置になったとたん、「何も裁かず、誰も守らない」物語に変わった一枚。

天秤はすでに傾いていた。
なのに、その王は、気づかないふりをして座っていた。

第九回は、“真実より都合を優先した正義”の話を、お届けします。


🧙‍♀️ 紫雲 – Shiun

タロットと紫微斗数を中心に活動する占い師。
「カードの絵柄は、心の鏡」をモットーに、ゆるやかに読み解いています。

📷 Instagram:@HarukazeShiun

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